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「私と英語挫折体験」

2014年12月26日

私の英語挫折体験

 雑草的英語学習を得意する(笑)小職ですが、そんな自身の英語観、勉強法を分かってもらいたいと
願い、その場を求めた挙げ句に挫折した過去の経験をご紹介したいと思います。
 基本的に私の英語学習は、英語を母国後とする人達との交流をベースにしていました。その中で、
次第に彼らから発せられる言葉の表現原則なるものに気付き、生意気にも英語はイメージだ、との
信条を得るに至ったのです。例えば、
“make”
という単語は「作る」という意味以外にも様々な表現に用いられますが、私の中では勝手ながら

①誰かの意思によって
②物事/誰かに変化を与えて
③変化を成功裏に終了する

というイメージを持っていました。 従って、作る、という意味以外にも、指示をする意味での
make someone xxxや、成功を意味するmake itもすんなりと頭の中に入ってきており、
その意味でもはや、作る、使役動詞、成功、というそれぞれの日本訳とのマッピングは
必要ないことに気付きました。もっとも効果的だったのは、on, off, to, for 等の助詞で、
そられにはそれぞれ固有のイメージがあり、それまでどの助詞がどの表現に当てはまるのかを
一つ一つ記憶していたものが、その作業から解放され、ただイメージと連動させるだけで
良くなったことは私の英語学習において大きなブレークスルーとなりました。

 さて、そんなイメージ英語論(?)ですが、この時点をピークに 転落の一途を辿ります。
イメージ英語こそ英語学習の肝だ!と信じて疑わなかった当時大学生の私は、このことを
子供達にも伝えるべきだと、 とある進学塾の講師募集に応募することにしました。恥ずかし
ながら当時私は塾講師というものは短時間でそれなりの稼ぎを得られるお得なアルバイトと
しても魅力を感じており、一石二鳥だということで意気揚々と面接に出かけたのでした。
 その面接時間が丁度夕方頃だったこともあり、丁度いい機会だから実際に生徒達の前で
模擬授業をやってみてくれ、ということになり、私はそのとき、こんなに早くその機会を
得られたことに興奮をおぼえた事を今でも鮮明に記憶しています。

渡されたテキストを適当に開いたページにあった、未来系の授業をすることになりました。

もちろん、基本的に
・ Will
・ Be going to
という二つの表現を同一として扱っていたようでしたが、先に述べたイメージ英語論では両者には
違いがあることは明らかでした。この両者は似ているが、ニュアンスが違う、という説明から
スタートしました。が、相手は中学生です。最初の質問が
   「ニュアンスってなんですか?」
といきなり出鼻をくじかれてしまいました。
   「ニュアンスというのは、雰囲気とか微妙な空気感という意味です」
と答えても
   「雰囲気って言われても、よくわかりませ〜ん」
と、どんどん話の本筋からそれて行ったので、これはマズいと思い、一番後ろの席に面接官として
陣取っている塾長先生への印象が悪くなってはならない、と早く本題のイメージ英語の説明に
移らねば、と上述の二つの表現の違いについて述べ始めました。

・Willは未来というよりは意思に近い単語で誰かの意思が形になることで未来が表現される
・Going toは物事が時間の経過と共に進んで行った結果を想定する表現

と得意満面の笑顔で説明しました。当然、私は、この中学生達の目からウロコが落ち、
先生すごい、もっと教えてください!と目を輝かせる彼らの姿が目に浮かんでいて、ああ、教育者と
いう職業こそ私の天職かもしれない、と恍惚とした表情を浮かべていました。しかし、
  「塾長先生、この人、テキストと全然違うことを言っています」
が生徒達から浴びせられた私への評価でした。
 子供とは非情なもので、一旦ダメ講師のレッテルを張られてしまうと全く私の話は聞かずに、
消しゴムを私に投げつけるは、雑談は始めるはで、残りの私のイメージ英語論はただ虚しく
教室の中で響き渡るのみとなりました。

 それでも我慢して授業を続けた私に対し、
  「先生、授業お疲れ様でした。これプレゼントです」
と授業終了後、一人の生徒から差し出された握りこぶしに、私は一縷の望みをつなぎ、
  「ああ、この子達も少しわかってくれたのだ。最初からうまく行くはずはない。教師ドラマのように
   時間をかけてこの子達に真の英語を学んでもらおう」
と半ば涙を浮かべながらその握りこぶしからプレゼントを受け取ると、それは、ただの丸めた
紙ゴミでした。
  「先生、捨てておいて〜」
と言い捨てながら出て行った生徒達の背中を視線で追う事もできず、 私の目線はただ呆然と
残された教室の中空を彷徨っていただけでした。
  「will とgoing toは同じ意味だと教えているのだよ。テキスト通りに教えてくれないと困る。」
と塾長にいわれ、続けざまに
  「君に塾講師は務まらない。残念ながら不採用だ」

 イメージ英語はその日を境にすっかり影を潜め、その後、日の目を見る事はありませんでしたが、
一方、仕方なしに始めたレストランのアルバイトで、コックとして意外な才能に気付き、そちらに
のめり込むことになりました。そして、そのレストランでも再び大きな英語のブレークスルーを
得ることになるのですが、その話はまた次の機会にでも。

 市民権を得る事がついに叶わなかったイメージ英語ですが、私は今でも実践しています。
皆様もだまされたと思って実践してみてはいかがでしょうか。効果を保証するものではありません
ので、自己責任のもとで。。

(文責:山西 毅 SCD2国内分科会フェロー/ CIGRE SCD2 事務局)