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おすすめ映画「AMADEUS」

2015年11月4日

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┃ ■  新ニュースレター No.35(土井 様/電力中央研究所)
┃    (テーマ:おすすめ海外映画)         
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「おすすめ海外映画」をテーマとして選択しましたが、実は、滅多に映画を見ま
せん。ですので、「ここぞ」という映画は見逃している可能性大ですが、数少な
い観た映画の中で、おすすめなのはご存知の方も多い”AMADEUS”です。
かなり古い映画ですが、モーツァルトの短い生涯(享年35歳)を映画にしています。
映画の設定では、サリエリというモーツァルトの才能に嫉妬した音楽家が、モー
ツァルトを殺したと、精神病院で神父へ告白する形になっています。
“Your... merciful God. He destroyed His own beloved, rather than let a
mediocrity share in the smallest part of His glory. He killed Mozart.
And kept me alive to torture. years of torture. years... of slowly
watching myself become extinct! My music....growing fainter. All the
time fainter...till no one plays it at all....And his....”

このサリエリのセリフにある”mediocrity”が、映画の重要なポイントになってい
ます。
すなわち、天才モーツァルトに翻弄され続けたサリエリが、人生で悟ったのは、
自分は神に見放された凡庸な人間にすぎなかった、ということで、これが映画の
テーマになっています。

しかし実際には、サリエリはかなり世間から評価を得ていて、ウィーンの宮廷楽
長の地位を得て、亡くなる直前までその地位にあり、音楽家としては大成功し満
足だったのではないかと思われます。また慈善家でもあり、弟子からは一切謝礼
を取らず、才能ある弟子への支援を惜しまなかったようです。ただ、「モーツァ
ルトを毒殺した」というのは、この映画だけの設定ではなく、サリエリが存命中
の当時からスキャンダルになっていたようです。音楽家のロッシーニからも
「モーツァルトを本当に毒殺したのか?」と言われたこともあるそうです。ただ
し、根も葉もない噂だったようです。

逆にモーツァルトは、フリーの音楽家として演奏会、オペラの作曲、レッスン、
楽譜の出版なので生計を立てていました。もちろん、当時もかなりの売れっ子
で、収入も大きかったようです。当時は年500フローリンもあればそこそこの生
活はできたところ、モーツァルトの収入は約3000フローリン程度はあったようで
す。ただ、モーツァルト自身の品行が悪く(モーツァルトの音楽からは想像でき
ないですが….モーツァルトの手紙を読むとそれなりに理解できます。)、徐々に
収入も減っていき、借金生活になったようです。大きな収入があって8000フロー
リンもの借金になってしまったのは、奥さんの療養費や傾倒していたフリーメイ
スンへの寄付金のため等、諸説ありますが真相は闇の中です。確かにモーツァル
トは天才だと思いますが、次のモーツァルトの手紙の言葉には納得するものがあ
ります、「僕ほど作曲に長い時間と膨大な思考を注いできた人は他には一人もい
ません。有名な巨匠の作品はすべて念入りに研究しました。作曲家であるという
ことは精力的な思考と何時間にも及ぶ努力を意味するのです。」また、モーツァ
ルトは、ほとんど頭の中で作曲を終えることができ、後は譜面として書くだけ
だったようです。風景を見るように一瞬で音楽が”見えていた”ようです。ですの
で、残された自筆譜を見ると、書き直しがなく、非常に綺麗な譜面です。一方、
ベートーヴェンは、推敲に推敲を重ねるせいか書き直しが多く、譜面が非常に汚
いです。

モーツァルト役のトム・ハルスはピアノや指揮を猛練習して、演奏は代役無しで
臨んだそうです。私も趣味でオーケストラをしていますが、見ていて違和感な
く、なかなか臨場感があります。この映画の屋外ロケは、中世以来の古い町並み
が現存するプラハで行われたそうです。映画を見て、中世ヨーロッパの世界へ飛
び込みみたくなりましたら、プラハを訪れると良いかも知れません。

あと、本MLでも話題になりました、私も楽しんだ映画の一つである”Apollo 13”
のセリフの言い回しについて一言。
宇宙船に事故が発生した時、映画でラヴェルが言う有名なセリフ”Houston, We
have a problem.”です。NASAの公式アーカイブでは、”Houston, We’ve had a
problem.”となっています(音声が聞き取りづらいですが)。公式アーカイブの
方では、現在完了形が使われています。現在完了形で言うと、問題があったけど
済んだこと(もう大丈夫かな)、と事態の深刻さは出てこないですが、映画のよ
うに現在形で言うと、シリアスさが伝わってきます。おそらく映画では、間違え
たわけではなく、意図的に演出されたのではないかと思いました。現在完了形の
使い方を、ちょっと勉強になった映画でした。
あと、この映画でジーン・クランツが言うセリフ”Failure is not an option.”
も好きなセリフです。実際には映画で作られたセリフですが、映画のテクニカ
ル・アドバイザーのジェリー・ボスピックへの「パニックになることはあるの
か」という問いに答えた”we just calmly laid out all the options, and
failure was not one of them.”に、脚本家が感動してジーン・クランツの名セ
リフ”We’ve never lost an American in space and we’re sure as hell not
gonna lose one on my watch! Failure is not an option!”が誕生したようです。 




                               以上

(文責:土井 博生 電力中央研究所/CIGRE SCD2 事務局)

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