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阿蘇の野焼き

2023年2月28日

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ニュースレター No.137(野村様/SCD2国内分科会委員)
 テーマ:「阿蘇の野焼き」
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みなさま、こんにちは。九州電力株式会社の野村です。
今回はみなさまに海外観光客にも人気の九州の観光名所の一つである阿蘇における野焼きについてご紹介させていただきます。

私は2018年から阿蘇グリーンストックという阿蘇地区一帯の野焼きや輪地切り(防火帯づくり)を支援する団体に所属しており、毎年9月から11月には輪地切り、3月から4月には野焼きのボランティアに参加させていただいています。

阿蘇について簡単にご紹介させていただきますと、阿蘇は熊本県と大分県の県境の熊本側に位置しており、ちょうど九州の真ん中あたりの地域で、国内外から年間1800万人もの観光客が訪れる観光スポットでもあります。特徴は何と言っても世界最大級のカルデラを有する活火山の阿蘇山です。高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳、根子岳の阿蘇五岳を中心として、その周囲にはカルデラが生み出した広大な平地が広がり、さらにその周囲を外輪山と呼ばれる高地の壁が囲っており、外輪山の展望台から眺める阿蘇の風景は本当に壮大なスケールであり、見るたびにいつも感動を受けます。

その阿蘇のもう一つの魅力が、阿蘇五岳の山麓や外輪山に広がる広大な草原です。視野いっぱいに広がる綺麗な緑のじゅうたんと青空のコントラスト、たまに放牧されている牛達に出会うこともあります。映画のワンシーンやCMなどでもたまに使われていますのでご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、本当に美しく、ゆったりとした時の流れを感じることができる場所です。(遠くから見た風にそよぐ草原は、ふわふわした柔らかい敷物のように見えるのですが、実際近くに行くとほとんどはススキであり、痛そうで寝転がる気にはなりませんが。。)

この阿蘇の素晴らしい草原は、実は自然に生まれたものではありません。阿蘇の草原は千年の昔からそこに住む人々が牛馬を飼い、農業を営むために人の手により創り出された人工自然なのです。阿蘇の草原に手を入れず放置しておくと、やがて藪になり、最終的には森林に戻ってしまいます。そこで草原に火を入れ、灌木や樹木の幼木を焼き払う野焼きを行うことで阿蘇の草原は千年以上も維持されてきたのです。

もともとは阿蘇地域の牧野組合(草原を保有して畜産業を営む住民)だけで長年野焼きは実施されていたのですが、最近の人手不足や高齢化によって、野焼きや輪地切りの持続が困難な牧野からの要請に応えて、阿蘇グリーンストックでは現在阿蘇全体の4割にあたる70牧野に対して野焼きボランティア支援をおこなっています。
ボランティアの内容は、秋の輪地切りでは刈払い機(長い金属棒の先に丸鋸がついた草切り機)を使って草刈りのお手伝い。春の野焼きではジェットシューター(背中にタンクがある大きな水鉄砲のようなもの)やたたき棒(飛び火した際に叩いて火を消す自家製の竹の棒)により、野焼きエリア以外の周辺への延焼を防止するお手伝いを行なっており、大体朝9時から15時までが活動時間となっています。

野焼きは早春の阿蘇の風物詩ともなっています。春の風の穏やかな日を選んで冬枯れの原野に火入をすると、火は瞬く間に燃え上がり、風をおこし、その風によってさらに激しく燃え上がり、火線となりあっという間に大地を真っ黒に焦がしていく様はまさに壮観の一言です。

https://www.youtube.com/watch?v=Ha1ngs-ZGq4&t=198s

みなさまも3月頃に阿蘇に観光に来ていただければ、運が良ければ野焼きに遭遇できるかもしれません。しかしながら野焼きは降雨・強風・霧など、天候によっては当日中止となることもよくあります。私は福岡から参加しているので、朝6時には家を出て車で現地に向かうのですが、途中で中止の連絡をもらうことも多々あります。そんな時は阿蘇やくじゅうの山に登って温泉に入って帰るようにしています。

今回野焼きボランティアについてご紹介させていただきましたが、自分の小さな支援が阿蘇の雄大な自然や景観を守っていることにやり甲斐を感じています。
この原稿を書いている翌週の3月5日には阿蘇北外輪山12牧野の一斉野焼きに参加してきますので、次回皆さまにお会いした際にはその時のお話ができればと思っています。

(文責:九州電力株式会社/野村 晃彦)